ねりまの文化財を訪ねて=6=
江戸の祭り囃子
神社の秋祭りの季節です。「ピーヒャラ、トントン」とお囃子(はやし)の笛や太鼓の音が威勢よく聞こえてくると、祭りのにぎわいにわくわくした子どものころを思い出す方も多いと思います。
囃子の演奏は、楽譜がないのにもかかわらず、地域の人々によって代々伝承されてきた民俗文化財です。区では、古くから区内に伝わる囃子のうち五つを練馬区登録無形民俗文化財(※1)とし、継承している方々を保持団体として認定しています。
区内に伝わる囃子は、ほとんどが江戸祭囃子の系統です。通説では、江戸時代の享保年間(1716~1736)に、葛飾区にある葛西神社の神主が神楽囃子の調子を取り入れ、音律を創作したのが起源といわれています。その後、江戸ではさまざまな曲や調子が考案されました。特に葛西囃子や神田囃子、目黒囃子などの五人囃子が完成し、各地に広まっていきました。
区内の五つの文化財(※1)のうち、石神井神社や氷川神社の例祭などで演じられる石神井囃子は、明治の終わりごろに目黒囃子系世田谷区経堂流の演者と交流し、「安宅(あたか)崩し」などの調子の早い早間(はやま)系の曲を演じる囃子として継承されています。
石神井囃子を継承している渡辺雍重さんは、昭和22年に囃子を習って以来、地域の祭礼に欠かせない囃子を伝えようと熱意をもって後継者の育成に尽力しています。9つの囃子団体で石泉囃子連合会を組織し、演奏会を行っています。また、地域の子どもたちにも囃子の楽しさを知ってもらい、将来、継承者になってもらおうと毎週、光和小で指導しています。(※2)
囃子は、演奏者だけでなく、観客も音色と一体になって楽しんでこそ、継承されていくものです。皆さんも演奏の機会を逃さずお出かけになり、大切な無形民俗文化財を保護し、継承していく役割を担ってください。
(※1) 令和3年度末現在、15団体が認定されています。
(※2) 渡辺雍重さんは故人となられましたが、後継者の方が現在も光和小で指導しています。
▽問合せ 区役所内伝統文化係
平成10年11月11日号区報
写真は、「石神井囃子」 (ねりま郷土芸能フェスティバル 平成29年)